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ビューティフルレイン 第7話 [豊川さん]

「まずママちゃんのお墓参りに行くでしょう?
次に、スカイツリーに上るでしょう?その後、浅草でお買い物?
その後、遊園地?」と美雨が聞くと
「うん、しょうゆうこと。」
「動物園は?」「時間的に遊園地か動物園か
どっちかだな。」と圭介。
「じゃ、遊園地。おじいちゃんとおばあちゃん
明日何時ごろ来るって?」
「朝一番のバスで沼津出るって。」
「う~ん、早く明日にならないかなぁ。」と
楽しみで仕方が無い様子の美雨。
「その為には、まず何をしたらいいと思う?」
美雨は考えて「早く寝る」と答える。
「正解」と笑う圭介。
「その前にやることは?」
「宿題やっちゃう」
「正解」
「その前に、まず今すぐやらなきゃいけないことは?」
「今すぐ?何だろう?」一生懸命考える美雨。
「朝ご飯、食べる」と正解を教える圭介。
「なるほど~。言えてる。頂きま~す」と手を合わせる美雨。
「ほら。納豆食べて夏バテしない根性つけとけ」と圭介。
テーブルには、ご飯、お味噌汁。冷奴、目玉焼き。
そして、野菜のおかずも3品ほど並んでいる。
「粘り強い人間になろう!オゥ~!」と手を挙げる美雨。
いつもの幸せな食卓を囲みながら圭介は、主治医の古賀に
言われた「この先、美雨ちゃんと二人だけで暮らしていくのは
難しくなるかもしれません。早めに一緒に美雨ちゃんを
見てくれる人を探した方がいいと思います」という言葉を
思い出していた。
考え込むような表情の圭介を見た美雨に
「父ちゃん、どうしたの?何か心配なことでもあるの?」
と聞かれるが「明日、晴れたらいいな」とほほ笑むのだった。
にっこり微笑み頷き合う父娘二人。

工場では、明生が「ダメだ。間に合わない」と言うと
「納品から帰ったら(やりかけの仕事を)仕上げるから、このまま
置いておいて下さい」と言って出かけて行った。
「自分たちでやっておこうか?」と言う圭介に
「初めて一人で任された仕事だから、最後まで自分で
やりたい」と言って出て行った明生に、宗さんも
「なんだかんだいって、アイツも一人前になったな」
と言うのだった。
「そういえば、明日、美雨ちゃんのじいさん、ばあさんが
沼津から出てくるんだって?美雨ちゃんとは
どれくらいぶりだ?」「一年ぶりです。」
「じゃあ、ばあさんたち、楽しみにしてんだろ?」
「美雨もすごく楽しみにしてるんですけど・・。」
「けど?」「いや。」微笑み返す圭介。
何か言いたそうな様子の宗さん。

事務所では、社長が計算が合わず、計算機片手に
「どうなってるんだ?おめぇは!」と怒鳴っていて
千恵子に「計算機に怒鳴っても、しょうがないでしょ」と
なだめられる。
「どうやっても合わねぇんだよ」
「字が汚いからでしょ」「そういう問題じゃねぇよ」と
いつものように言い合う二人。
アカネが出て来て「何なの?朝から」
千恵子が「お父さんがいつものアレ。帳簿が合わない病」と
答えると「そんな病気があるか~!」と返す富美夫。
アカネは「ちょっと貸して」と手書きの帳簿を受け取り
「ずっとこのやり方?」と尋ねると「他にどんな方法が
あるんだよ」と答える富美夫。

そこに美雨が入って来て「千恵子おばちゃん、宿題終わったから
バレエに行って来る」と言う。
「今日も菜子ちゃんと一緒?」と千恵子に尋ねられ
「うん」と頷き、アカネに「明日、おじいちゃん、おばあちゃんに
会えるの楽しみだね」と
言われて満面の笑みで頷くと「行ってきます」と
元気に出かけて行った。

富美夫が「アカネ、どうすれば帳簿、合うようになるんだ?」
と聞くと、アカネは帳簿を返し、ちょっと待っててと言って
PCに向かい「ここに収支を打ち込めば、勝手に計算してくれるの。
打ち込むのは、ちょっと手間だけど、この先楽になるから、やって
おいた方がいいよ。」と両親に話すと感心する二人。
「俺に覚えられるかな?」「無理でしょ。お父さんには」という
二人のやり取りを聞いたアカネは「じゃ、あたしやろうか?」と言い
「え?これ全部?」と驚く千恵子に「バイト代、時給一万円で
どう?」「時給一万?」驚く富美夫。
「冗談よ。家賃に光熱費、食費分くらい働かないと
あたしも肩身狭いし・・」とアカネが言うと
「じゃ時給100円で頼むわ、な」と富美夫が言い
「ダメよ。いくら身内でも、せめて時給150円は
あげないと。」と言う千恵子。
これにはアカネも「ひど~い!言っとくけど、経理手伝うからには
経費削減にもビシビシ、口出させてもらうからね」と返すのだった。
これに千恵子は「お父さんは節約、節約って口ばっかりなの。
ビシッと言ってやってよ」と言い、富美夫は「まぁ、ひとつ
お手柔らかによろしくお願いしますよ。先生」と言い
笑いあう三人。

八百屋の店先で水撒きをする菜子。
健太とバレエの発表会の話をしながら歩いてくる美雨。
「わぁ~!」美雨が大声を上げて、飛び退くと
「わ!」と言って健太に水をかけてしまう菜子。
「美雨ちゃん、大丈夫?」とすぐに美雨に声をかける菜子。
「美雨は大丈夫だけど」と言いながら、健太を見ると
「大丈夫」と言いながら笑っている健太に
「すみません」と謝る菜子。
「健太君、涼しくなって良かったな」とタオルを投げてくれる
隣の魚屋のおじさん。
「ありがとうございます」と受け取るが魚臭いタオル。
菜子ちゃんのお父さんが「菜子、広い道に出たら、ちゃんと
(美雨ちゃんと)手を繋ぐんだぞ」と言うと
「うん、わかってる。」と答え、エプロンを外す菜子。

中村産業では、圭介、宗さん、社長が昼食を取りながら
話していた。
「つまり、美雨ちゃんのおじいちゃん、おばあちゃんに病気の事を
どう伝えるか、悩んでるってことか?」と社長。
「出来るだけ、心配かけないように言いたいんですけど」と圭介。
「あぁ、なるほど。それを今朝から考えていたのか」と
腑に落ちた様子の宗さん。
「どう伝えたって、心配されるだろう」と社長。
「年寄りは心配性だからな」と宗さんは言い
「まだ言わなくてもいいんじゃない?そういう事なら
美雨ちゃんを引き取りたいなんて言ったらどうするの?」
と話す千恵子。
「それありうるな」と社長。
「だけど、いつまでも黙っているわけには・・・」と圭介。
「今すぐ言わなきゃいけないってことでもないでしょう?」
と千恵子。「確かに離れて暮らす年寄りに余計な心配
かけねぇ方がいいかもな」と社長。
宗さんも「まだ言わない方がいいよ」と言う。
「そうですかねぇ」と答える圭介。
PCに向かいながらも、心配そうに黙って聞いていたアカネは
千恵子から「ねぇ、アカネ。あんたもそう思うでしょ?」と聞かれ
少し迷いながらも「私は、ちゃんと話した方がいいと思う。
病状を正直に話すことはもちろん、今後症状が悪化した時に備えて
美雨ちゃんをどうするか、きちんと相談しておいた方がいい。」
と答える。
千恵子が「圭さんと美雨ちゃんが離れ離れに暮らすことに
なったらどうするの?」と言うと「いずれは考えなきゃいけない
ことでしょう?」と言い、千恵子が「だけど、まだ症状も軽いし
普通に暮らす分には対して問題ないんじゃない?」と言うと
「問題が起きてからじゃ遅いのよ。ハッキリ言って私は
別居するなら早い方がいいと思ってる。」と言うが
千恵子は「なんで、そんな冷たいことを・・」
宗さんも「美雨ちゃん、かわいそうじゃないか」と言い
社長も「頑張れば何とかなるって」と言い
千恵子も「そうそう!あたしたちもついてるし、ねぇ。」と言うが
アカネは「気持ちはわかるけど、頑張ってもどうにもならない
ことだってあるでしょう?」と言い、「何か事故が起きてから
後悔しないためにも、ちゃんと先々の事、考えておいた方がいい。」
と続けるのだった。
考え込む圭介。

そこへ息を切らした明生が入って来て「ちょっと来て下さい」と言う。
皆で外に出ると、明生が廃棄物の中から、自分の作りかけの
部品を取出し「これ、廃棄したの、誰ですか?」と聞く。
「俺だけど」と圭介。「なんで?」と明生。
「だって、廃材料の上に置いてあったから」と言うと
明生は「俺がやりかけてる仕事だから、このまま置いといて
下さいって、言って出かけたじゃないですか?」と言うが
圭介は思い出せない。
「圭さん。俺が出かける前に言ったこと、覚えてないんですか?」と
言う明生に「すまん」と頭を下げる圭介。
「どういうことすか?」と怒る明生。
「明生、俺・・・」と圭介が言いかけると、社長がそれを遮って
「明生、ちょっと来い。話がある。」と明生に言う。
いぶかしげな明生。
まだ、圭介に何か言いたそうな顔をしているが、社長について行く。
「オレ、何か悪いこと言いました?」と訳の分からない明生は
そこで社長に「圭さんはな、若年性アルツハイマー病なんだ」と
明かされる。
「じゃく?」と、よくわからない様子の明生に、千恵子が
もう一度、病名を聞かせ「今までの事をどんどん忘れて
行ってしまう。一生治らねぇ病気にかかっちまったんだよ。」
と社長に言われ、あまりのことの重大さに衝撃を受ける明生。

バレエ教室でレッスンしている美雨と菜子。
休憩に入ると、菜子が「あそこの遊園地のメリーゴーランド
すっごくかわいいから、絶対写真撮ってもらった方がいいよ」
と美雨に言う。
「あと、ゴーゴーコースターは結構怖いから、美雨ちゃん
泣いちゃうかもなぁ。」と言われると、美雨は「平気だよ」と返し
「どうかなぁ?」と言う菜子に「絶対泣きません」と
口を尖がらせて言うと、二人で笑い合うのだった。

社長から話を聞いた明生は泣きじゃくる。
社長は「もう泣くな。いい年して。」と言うが
「だって」と涙が止まらない明生。
千恵子が「言っておくけど、美雨ちゃんは薬を飲めば治ると
思っているから、余計なことは言わないでね」と話す。
頷く明生。

圭介と宗さんが廃材の中から、明生の作りかけの部品を
取り分けている。
明生が出て来て「圭さん」と声をかける。
「俺、何も知らなかったから・・・。
すいませんでした。」と頭を下げる。
それを聞いた圭介は明生に歩み寄ると「謝るのは俺の方だ。
お前が謝ることは何も無い。本当に迷惑かけて悪かった。」と
頭を下げた。
すると明生は泣きながら「俺だって、圭さんには今まで散々
迷惑かけて来たし、上手く言えないけど・・・」言葉に詰まる明生。
圭介は、その肩をつかむと「ホラ。今日中に仕上げなきゃ
いけないんだろ?な!」とはっぱをかけた。
「ほら、仕事仕事。」と宗さんも言って、作業に取り掛かる。

富美夫と千恵子は「明生のやつ、だいぶショックを受けてたな。」
「そりゃあ誰だってショックよ。一生治らない病気だなんて
聞かされたら。」と話していると、アカネが「でも一番つらいのは
圭さんだと思うけどね」と言い、千恵子も「そうよね。そりゃ
その通りだ。」と頷く。
富美夫はアカネに「この間、3年も拓哉君のお義母さんの介護を
してたって言ってたけど、もしかしてあれ・・・」と言いかけると
「もちろん若年性じゃないけどね」とアカネ。
「えぇ~?アルツハイマー病だったの?」と驚く千恵子。
「やっぱりそうか。でなきゃ、あんな風に強く言えねぇ
と思ったんだ。」
「そういうことだったの。あぁ、ほんとにどうするのが一番
いいんだろうねぇ?」と千恵子。
そこに「社長」と言いながら入って来た宗さんと明生。
「なんだ?金ならねぇぞ」
「知ってるよ。今夜ちょっと付き合ってくれよ」と宗さん。
「お願いします」と、いつになく真面目に頭を下げる明生。

美雨はポシェットを並べて悩んでいる。
圭介が入って来て「まだ迷ってんのか?早く歯磨きして来い。
明日寝坊したらどうするんだ」と言われ
「だって・・・。」と言いながらも「じゃ、コレにしよ」と
1つに決める。
圭介は「父ちゃんの病気の事なんだけど、おじいちゃん
おばあちゃんには、父ちゃんから、ちゃんと話すから
美雨は何も言わなくていい。わかったな」と言う。
美雨は笑顔で「うん。わかった」と返事する。

小料理はるこに行った、社長と宗さん、明生の3人。
「社長、圭さんの病気は本当に絶対に治らないんですか?」
「大学病院の先生がそう言ってるんだから・・」
「いつ?誰が?どこで?何時時何分何秒?地球が何回
回った時ですか?」と話していると、春子が「圭さん、病気なの?
いつから?」と聞くので社長が「いや、たいしたことじゃないんだ」
と言うと「言っとくけど、病気になった時は、お医者様に
遠慮しちゃダメよ。この薬は効くんですか?とか、いつ
治るんですか?って、どんどん質問して、早く治せアピール
しないと。一人のお医者様が何人の患者さん診てると思ってるの?
ずうずうしく行動を起こさないと、どんどん後回しにされちゃう。」
と言うのだった。すると明生も「あ!うちのばあちゃんも
同じようなこと言ってた」と言う。
「圭さんはさ、何かと控えめだから、周りがしっかり
フォローしよう!ねぇ!」と春子。
それを聞いて何か決意を固めた様子の明生は「よ~し!おかわり」と
ビールのおかわりを頼むと、横で寝ていたはずの宗さんまで
「おかわり」と言うのだった。

圭介は仏壇の妙子の写真を見ながら、みんなの
言っていたことを思い出していた。
ベランダに出ると、向かいの母屋のベランダで、タバコを
吸っているアカネ。
圭介に気付き「昼間はごめんね。キツイ言い方しちゃって」
と言うと「拓哉君から聞いたよ。アカネちゃん、俺と同じ病気の
お義母さんを介護してたって・・。アカネちゃんの言ってる
ことは、よくわかる。だけど社長や奥さんの言うように
余計な心配はかけたくないし、美雨と離れて暮らすなんて
考えられないし・・。病気の事、ちゃんと受け入れたつもり
だったけど、まだ心のどこかで、自分だけは治るんじゃないか?
そのうちもっといい薬が出来るんじゃないか?って期待している
ところがある。」と話す圭介。
頷きながら、それを聞いていたアカネは「とにかく最終的には
圭さんが、美雨ちゃんのためにも、どうすることが一番いいのか
よく考えて決めるしかないんじゃない?」と答えると「うん」と
頷く圭介。

翌日。
圭介や、おじいちゃん(浜田晃)、おばあちゃん(岩本多代)と一緒に階段を上る美雨。
お墓に水をかける圭介。美雨は、おばあちゃんと一緒に
お花やお手紙を供え、皆で妙子のお墓に手を合わせた。
「妙子、美雨は圭介さんがこんなにいい子に育ててくれている
から、安心してね」と言う義母。
美雨を抱き上げ、お墓の前の階段の下におろすと
義父も「圭介君、男手ひとつで本当に、よくここまで。
感謝してる」と言い義母も「これからもよろしくね」と
に二人から頭を下げられて「はい」と答える圭介。
「美雨ちゃん、今日の予定をもう1回、おばあちゃんに
教えて」と義母が言うと美雨は、はりきって答え、はしゃぐ。

バス停で時刻表を見ながら「あれ?どこへ行くんだっけ?」と
手帳を見る、圭介の様子に気付いた美雨が圭介の傍に行き
「どうしたの?」と尋ねる。美雨に「ちょっと待って」と言い
二人同時に「スカイツリーだ(よ)」言うと
「どうしたの?」と不思議そうな義母に
「ううん、何でもない」と二人で手を取り合い、笑ってみせた。

スカイツリーを見て大きいと感動した美雨はスカイツリーを背に
おじいちゃん、おばあちゃんと、父ちゃんと一緒の写真を
沢山撮ってもらう。
浅草でも、沢山シャッターを切る圭介。
ニッコリ笑って父ちゃんを見た後、真剣な表情で
お祈りする美雨。

一方、中村産業の社長、宗さん、明生の3人は圭介の
受診している、城都大学医学部付属病院の前に来ていた。
「ホントにいいのかなぁ?」と言う社長に
明生は「何言ってるんすか。圭さんの一大事ですよ!俺らが
行かないで誰が行くんですか!」と言うと
肩を回している。
「なんか殴り込みに行くみてぇだな」と言う宗さんに
苦笑いする社長。

メリーゴーランドに乗る美雨。
たくさん写真を撮ってもらい、圭介に駆け寄る。
「メリーゴーランド、楽しかったか?じゃ、今度は
父ちゃんと急流すべり乗るか?」と聞かれ
「乗る!」と答える美雨。
「きゃ~」と叫びながらも、はしゃぐ美雨。
圭介は、ここでもたくさんの写真を撮った。

美雨は、「次はティーカップに乗ろう」と向かいかけて
圭介が忘れていた荷物に気付き、持って来ると
「行こう。父ちゃん」と手をつなぎ、おじいちゃんたちを
追いかけた。

大学病院では、3人が古賀先生の診察室に。
目をパチクリする先生。

飲み物を買いに行った美雨たちを待ちながら
これからのことを考えている圭介。
戻ってきた義母は「今、美雨ちゃんと相談したんだけど
出来たら、このまま美雨ちゃんを沼津に連れて帰らせて
もらえないかしら?」と言い出す。
「美雨を沼津へ?」

診察室。
「つまり皆さんがお聞きになりたいのは、木下さんの病気が
治るのか、治らないのかということですか?」
「まぁ、簡単に言うと」と社長。
「いや。ハッキリ言って、治してもらわないと
困ります。」と明生。
宗さんも「先生は知らないと思うけど、圭さんはホントに
いいヤツなんですよ!」と力を込めて言うと
「超男らしくて、仕事も出来て、優しい父ちゃんなんですよ!
先生も1回、うちの工場に来たら、わかりますよ!」と明生。
「だから圭さんと美雨ちゃんが離れ離れになるなんて
そんなの絶対ありえねぇんすよ!」と言い
「どうなんですか?先生」と尋ねる社長。
古賀が「木下さんは幸せ者ですね。こんなに皆さんに
心配してもらえて。」と言うと
社長が「それで?」
明生が「治してもらえるんすよね?」と言うのだった。

「沼津のお祭り?」と圭介が聞くと美雨は頷き
「うん、おじいちゃんが山車に乗って太鼓をたたくんだって!」
義母が「お祭りは明日の夜だから、今夜行って、明日
お祭りを見て、明後日には送って来るから。」と言い
美雨も「ねぇ、父ちゃん、行ってもいいでしょ?」とねだる。
圭介は「だけど、一人で大丈夫か?」と心配すると
「だいじょうぶぃ」とサインをして見せ、笑う美雨。
「もう2年生だもんね」「なぁ」と言うおじいちゃんたちに
「うん」とニッコリ笑って答える美雨は
「お願い。どうしても行きたいの」と言い、圭介は
「わかったよ。じゃ、行って来な」と答える。
喜び、帰って準備をしようと言う義父母だったが
圭介は「おい、美雨。メリーゴーランド、乗らなくて
いいのか?ほら。昨日から絶対メリーゴーランド
乗って、写真撮るんだって言ってたじゃないか」と声をかける。
「メリーゴーランドなら一番最初に乗ったじゃない?」
と義母に言われ「覚えてないのかい?」と言う義父。
それを見た美雨は「乗る!もう一回乗っていいの?後で
もう一回乗りたいって、さっき父ちゃんにお願いしたの。
ね!父ちゃん!」と言って笑うのだった。
納得した様子の義父母。
楽しそうにメリーゴーランドに乗って、手を振る美雨。
美雨の写真を撮りながら「美雨は父ちゃんが大好きだから。
世界で一番大好きだから。ずっと一緒に居てね」と言ったことを
思い浮かべ、今までの事を思い浮かべる圭介。
何とも言えない表情でファインダーから目を外し、
義父母に「実は折り入って話したいことがあるんです」と言う。

中村産業では千恵子が、帰って来た富美夫たちに
「それで、どうだったの?先生、なんて?」と尋ねていた。
「担当医として、出来る限りの事はさして頂きます。今は
それ以上の事は言えません」と答えた事を話す。
「それだけ?新しい薬が出来て、治るかもしれませんとか
そういうことは聞けなかったの?」と千恵子が言うので
アカネが話そうとすると「病気の事は守秘義務があるから
話せないと言われた」と富美夫が答え、アカネは
それを聞いて頷く。
続けて明生が「けど、言いたいこと全部言ったから
何とかしてくれると思います」と言うのを聞いて
「はぁ~?」という顔で明生を見るアカネ。

そこへ「ただいま~」と言いながら、浅草のお土産を持った
美雨が入って来た。
皆、笑顔で迎え、アカネが圭介の事を聞くと
「うちで、おじいちゃん、おばあちゃんと、お話してる。
終わるまで千恵子おばちゃんちで待っててって。」と話す美雨。
それを聞いて、頷き合う皆。

圭介は麦茶を義父母に出すと、向き合って座った。
「それで話って?」と聞く義母に「実は・・」と話し始める圭介。

「じゃ、今日から沼津に?」と美雨に尋ねる千恵子。
「うん。明日、お祭り見て、明後日帰って来るの。」
と答える美雨は「父ちゃんたちの話が終わるまで、お絵かきして
待ってていい?」と聞くので、千恵子が「うん。じゃ、奥の部屋
使ったら?」と言ってくれた。
「ありがとう」と言うと美雨は、お絵かき帳を持って
奥の部屋に入って行った。

「若年性アルツハイマー病って、私たちが知ってる
あの、アルツハイマー病?」と尋ねる義父母。
「65歳以下で発症するケースをそう呼ぶそうです。」
と圭介が答えると、戸惑いを隠せなかった。

絵を描いていると、色鉛筆の芯を折ってしまい
奥の部屋から出て来た美雨。
美雨に気付かず、話している明生と宗さん。
「リハーサル?」「つまり圭さんは美雨ちゃんと離れて暮らす
覚悟を固めて、そのリハーサルで沼津に預けてみようと
思ったんじゃないですか?」
「だから美雨ちゃんには、聞かしたくなかったってことか」
「よし。ちょっと俺、行ってきます」と言う明生に
「いい。いい。おめぇが入ると余計話がややこしくなる。」
と慌てて止める宗さん。

ショックで絵を描くことも忘れ、呆然としている美雨。
千恵子がスイカを抱えて帰って来て、美雨の様子が
おかしいことに気付く。

「医者からも病気は、まだ初期症状で、今まで通りの生活で
構わないって言われていますし、病気の進行を遅らせる薬も
毎日ちゃんと飲んでます。」という圭介に
「じゃ、今すぐ特に困ったようなことは?」と尋ねる義父に
「何もありません」と答え、美雨の事を聞かれると
病気の事は知っているが薬を飲めば治る、と伝えてある
と話すと、義母が「でもアルツハイマー病は治らないんでしょ?」
と尋ねられ「今はそうでも、この先、医学が進んで新しい薬が
開発されれば治る可能性があると思っています。」と答え
「正直、お義父さんと、お義母さんには余計な心配も
かけたくなかったし、お話しするべきか迷いました。だけど
やっぱり美雨の事を第一に考えて、すべて正直に、お話
しようと決めたんです。もしかしたら、この先、相談に
乗ってもらう事もあるかもしれませんが、当分は今まで通り
しっかり美雨を育てていきたいと思っています。もし状況が
変わるようなことがあれば、その時は すぐに・・」
と話していると、美雨が急に入って来て「沼津には行かない」
と言い出す。みんなに「何故?」「どうしたんだ?」と聞かれるが
黙っている。
「美雨、ちゃんと答えなさい。」と父ちゃんに言われても
「沼津には行かない。どうしても行きたくないの。」と叫んで
部屋に入ってしまう美雨。
追いかけて来た圭介に「なんで?」「なにが?」
「父ちゃん、ずるいよ。リハーサルなんでしょ?」
「リハーサル?」
「なんで、離れて暮らさなきゃいけないの?
父ちゃんの病気、もうすぐ治るんでしょ?それなのに
なんで美雨だけ沼津に行かなきゃいけないの?」と美雨。
「誰がそんなこと、言ったんだ?」と言う圭介に
「美雨は父ちゃんと離れたくない!ずっと一緒に居たい。
だからリハーサルには行きたくない!」と泣きながら
精一杯訴える美雨。
その様子にグッと来ながらも「ばか!父ちゃんが美雨と
離れるわけないだろ?美雨と父ちゃんは、ずっと一緒だよ」と答え
「ホント?」と言う美雨に大きく頷き「だいじょうぶぃ」と言い
やっと安心しながら、泣き笑いの美雨をギュッと抱きしめる圭介。

「本当にすみませんでした」と言う圭介に「私たちは大丈夫。
それより美雨ちゃんの事、お願いね」と義母は言い
「何かあったらすぐ電話して。高速飛ばせば、2時間も
かからないんだから、いつでも頼りにしてくれて
いいんだからね」と言う義父。
「ありがとうございます」とお礼を言う圭介。
「さよなら。又、東京に遊びに来てね」と言う美雨に手を振って
中村産業の皆に「今後ともよろしくお願いします」と頭を下げて
義父母は沼津に帰って行った。

「良かったね。美雨ちゃんを引き取りたいなんて言われなくて。」
「アカネの言ったとおり、正直に打ち明けて良かったよなぁ。
いざって時は、力になってくれそうだし」
「俺もその方がいいって最初から思ってんだよ」
「よく言うよ」
「よし、じゃ、久しぶりに皆で焼き肉でも食うか」と社長。
「なんで、いきなり焼肉なの?言っとくけど、焼肉の材料は
経費として認めませんから」と言うアカネに
「わかってるよ」と言いながら、美雨を呼び寄せて
「肉、食おう」と言う社長。
大喜びで飛び上がる美雨。

その夜、皆で楽しく焼き肉を食べている。
「アタマが良くなるから玉ねぎを食え。」と
明生が言われているのを聞いた美雨が
「玉ねぎを食べると頭が良くなるの?」と聞くと
千恵子が「どうかなぁ?明生君の場合、ちょっと手遅れかも」
と答え、笑っている。
その時、圭介の携帯電話が鳴る。
沼津の義父母からだった。
「あれから又二人でよ~く話し合ったんだけど、やっぱり
美雨ちゃんを私たちで引き取らせてもらった方がいいんじゃないか
と思って」と言う義母。
美雨は今日の事を、皆に楽しそうに話している。
その様子を見ながら、切ない表情で見つめる圭介。

***********************************

中村産業(圭介の勤め先)の中で、1人だけ、まだ圭介の病気を

知らなかった秋生にも、ついに病気が知らされました。

お馬鹿だって皆に言われているけれど、芯はまっすぐで、優しい気持ちを持った

明生の涙に、ホロっとしましたね。

春子さんに言われて、ついには古賀先生にまで会いに行っちゃうし。

中村産業の団結力と言うか、皆の温かさに本当に心を打たれました。

そして、亡くなった奥さんの父母で、美雨のおじいちゃん、おばあちゃんに

病気を打ち明けました。

明生たちの話を聞いた美雨の誤解から、今回の沼津行きは無くなりましたが

最後に、電話で、やっぱり美雨を引き取りたいと言って来た義父母。

でも、義父母だって若くは無いし、いつ何時、どうなるかわからないですよね。

圭介の病の進行と、どちらが早いか、どっこいどっこいかもしれないし。

それに圭介は、美雨が生きる支えなのに、離れてしまったら生きる力や

病気と闘う気持ちが弱まってしまうんじゃないかと思えて心配です。

何とか二人が離れずに暮らせるといいのですが・・・。

義父母に病気を打ち明けるまでに、出かけている間、圭介がピンチになると

力を発揮して、父ちゃんに助け舟を出した美雨。

健気でしたね。

今回もフォトギャラリーから、浅草と遊園地での美雨と父ちゃんのショットを
beautifulrain7.jpg
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コメント 4

アルマ

病気の進行と寿命のどちらが先か・・・って事ですよね・・・
確かにこの選択は難しいと思います。
美雨ちゃんに言えない辛さとどうにもならないもどかしさ・・・考えさせられますね。

by アルマ (2012-08-19 00:36) 

未来

この世は中々上手くいかないものですね。
何の罪もない善良な小市民が不治の病にかかってしまう。
切なくて、辛くて、悲しいのですが、どうにか乗り越えて幸せになってほしいものです。
by 未来 (2012-08-20 08:01) 

つなみ

こんにちは(⌒∇⌒)ノ"
今回も大変な内容でしたね。
もう、拝文するだけで目頭が…。
すごくわかりやすい文章で、絵が浮かびます。
ふーε=( ̄。 ̄ )有り難うございます。
by つなみ (2012-08-20 14:15) 

ともちん

8話の途中から観はじめました。
やっぱり、ずっと観ているには切ないです。
ここまでじゅりあんさんの記事でわかっていますが
この先も観ていられなくなったら記事で教わろうと思います。
by ともちん (2012-08-21 22:22) 

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